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ムーアの法則、という有名なものがある。
簡単にいうと、2年半ほどの周期で、計算機の処理能力が倍になるというものだ。
この予測は、現在までほぼ正しく、今後も同じ推移をしていくものと考えられている。

とすると、20年ほどすると、人間の脳細胞の数を一つのCPUで上回ることになる。

だが、しかし、人間の脳と同じだけの処理能力を持った計算機が出現したとして、それが、はたして人間のような、意思、自我、といったものを持ちえるのだろうか？

人間の脳というのは、電気信号のやり取りを主として行われている。
簡単に説明すると、数種類のイオンがあって、そのイオンそれぞれに対応する弁がついており、その弁を開閉することにより、電荷の移動が起こり、情報を伝達できるシステムになっている。それが何十万、何十億と複雑に連なることで脳を形成しているのだ。
計算機との最大の違いは、情報が何に乗っているかという点。
計算機はクロック、つまり一定時間で動いている点。
一定時間経過したときの信号が１か０か、それで動いている。
信号の強弱に情報が乗っているというわけだ。
一方、脳は可変の時間で動いている。一定以上のインパルス信号、発火と呼ばれる現象だが、それがどれだけの頻度（間隔）で発生しているか、ということに意味を持つ。
荒っぽく言ってしまうと、FM変調にやや近い。


今、脳のシミュレーションを行っている。といっても、脳のほんの数％程度の規模ではあるけれど。
実験用のマシンは4コア*2、メモリ8G。これを90台並列で使っている。並のワークステーションんでは、太刀打ちできない程度のハイスペックである
しかし、これだけやっても、実験の一つのデータを得るために大体4000secかかる。
メモリをほとんど食いつくすので、外部から実験に使っているPCにアクセスがあった場合、（もちろん実験用のPCは大学共有のものなので、学生ならだれでも使える）エラーが発生するほどシビアなので、おもに深夜に行っている。

実験をやっていて、思うことがある。たとえば、これをスパコンで、脳のそれこそ数十％という単位まで拡大して走らせてみたら、果たして自我は芽生えるのだろうか？
記憶に自我が宿る、という人も多い。人間の記憶というものは数十T程度しかないと言われているので、その程度であれば、十分メモリーとして確保できる量である。
この、記憶と脳を計算機に組み込むことで、自我を産ませるという計画は、実のところ、割と進行している。プロジェクトが立ち上がり、実験プロトコルまで一時期は決定していたらしい。
ただ、ここ最近の不景気でスポンサーが撤退してしまい、計画は頓挫気味なのだそうだ


あくまで、ここから先は、実験的でもなんでもなく、個人的な妄想。
恐らく、そこには自我は生まれないんじゃないかなぁと思う。
それは機械だから、とか理論に基づいてとかではない。現段階の科学的根拠に基づいた判断では「わからない」とするのが正しい。
というか、無理とわかっているのならスポンサーはつかないし、実験をやる必要もないしね。
人間だけ特別扱いするわけでも、可能性を信じていないわけでもないけれど、なんとなく。
勘というのが正しい。理系の人間にあるまじきことだとは思うけれど。
まーだからどうってわけでもないんですけどね。


何が言いたいのかというと、なんとなく、こういう駄文を書きたくなる時もあるということで。